2015/01/28

■グラフィック薄氷大魔王[419]字幕派と吹き替え派

■グラフィック薄氷大魔王[419]
字幕派と吹き替え派

吉井 宏───────────────────────────────────
●「rinkak 3Dプリントデザインコンテスト」 

締切が2月2日(月)まで延びました。僕も3Dプリント作品のショップを出してる「デジタルものづくりサービス rinkak」が、3Dプリント作品の国際コンテストの作品募集をしています。
https://www.rinkak.com/contest/3d-printing-design-contest/2014/1

●「メガマインド」、「ビー・ムービー」

日本では劇場公開されなかったCGアニメ映画「メガマインド」。面白かった。ドリームワークスのCGアニメは、スベるのお構いなしの細かいギャグが多すぎてウンザリすること多いけど、これはなかなか良かった。時たまセリフが空回りするのはたぶん日本語吹き替えのせいだろう。「The Art of〜」の本は持ってたんだけど、本編を見てなかったのでした。スーパーマンの映画の小ネタ満載。

「モンスターVSエイリアン」とかもそうだけど、ドリームワークスCG映画のヒロインって、たぶん日本人的好みではないんだろうけど、妙に生々しい、というか、実在の女優が演じてるように見えるというか。CGアニメのキャラな感じがしない。

そういえば先日もう一本、キャラクター仕事の参考にCGアニメ映画観たんだった。「ビー・ムービー」。こちらのヒロインも妙に生々しいドリームワークス作品。笑えないギャグが多いし感情移入しにくくてちょっとツラかった。これもやはり吹き替えの問題なんだろうなあ。


俳優の声の演技をリップシンクしたりタイミングをそのまま使ってるのに、吹き替えしちゃうと元のニュアンスがわかりにくく、とってつけた感じになっちゃうんだろう。それも、いかにもアメリカンな軽口ギャグの翻訳なわけだし。日本の声優がおふざけ調で吹き替えてそれでもまだ面白いって、難易度高すぎ。

たぶん、こういう傾向のアニメを吹き替えるには、アニメを素材として完全に日本のものに作り変えちゃうくらいしないとダメなんだろう。「チキチキマシン」などのハンナバーベラのアニメみたいに。または、広川太一郎的な。

●映画の字幕と吹き替え

ちょっと関連で、「戸田奈津子バッシング」についての記事がきっかけで、Facebookで字幕と吹き替えについて考える機会があったので、続けて書いてみます。

「スター・ウォーズ」や「ロード・オブ・ザ・リング」などの字幕の悪評はなんとなく知ってた。じゃあマニアが文句つけてこないような一般的な映画なら大丈夫なんだろうと思ったら、珍訳のリストを見ると、やっぱ浮上してない細かい問題もいっぱいあるんだろうなあ。

普段、字幕が誰かなんて気にしてないです。っていうか、選べないし。「字幕/戸田奈津子」って出ても別にガッカリしたりしないもん。むしろ、「さすが戸田奈津子!」な印象も多かった気がする。

●かつて字幕派だった理由

僕はずっと字幕派だったけど、最近は吹き替え派。なぜ字幕派だったかというと、「洋画は字幕で観るもの」「吹き替えのテレビの映画を観るのは素人」「俳優本人の声を聞かないでどうする」「英語の勉強になる」などなど、字幕で観るほうが賢くて高級と思わされてたらしい。

「外国の映画を字幕で見るのは日本だけ」と先日も戸田氏がテレビで言ってましたが、庶民が娯楽映画を楽しむのに語学力や字幕を読み続ける努力を求められるってのは世界中どこにもないんじゃないかなあ。だから吹き替えが当たり前と。

たぶん、日本で一般の観客が字幕付き映画を見る習慣ができたのは、「ほとんどの人が難なく文字を読める」ことと、「漢字かな混じり文の日本語」が速読に適していたこと。それに加え、スノッブ的教養文化の尖兵であった映画評論家やマニアが「通は字幕で見るもんだ」的講釈を垂れ流し続けたのが大きな原因なんだろうと思う。「君の瞳に乾杯」が名訳としてもてはやされてしまった弊害w

一方で、声優がスターになってるくらい、吹き替えやアフレコに関する技術や文化も日本では大盛況なわけで、吹き替えと字幕が両立してるのは日本ならではだなあ。

●吹き替え派になった理由

昔はいっぱい観てたのに、フリーになって20年くらい年に数本くらいしか観なくなってヤバいと思ったのが4〜5年前。普通に会話に出てくるような映画もほとんど観てないのはマズい、ってことで、時間を作って映画を観るようになりました。っても年に40〜50本程度、ほとんどレンタルDVDとiTunes映画ですけどね。

普通は字幕で、特撮映画とかCG映画など画面の絵から目を離したくないものは意識的に吹き替えにしてた。そしたら、あれ? 吹き替えのほうがぜんぜん楽しめるぞ! と思い始めたのでした。僕的にはツッパるのをやめてラクになった感じw

そもそも、昔テレビでたくさん映画を観たのも全部吹き替えだったわけだし。字幕は、ネイティブ並みに外国語が聞き取れるんじゃなければ、映画の面白さの三分の二くらい損してるんじゃないかとまで思うようになった。吹き替えも損してることがあるだろうけど、少なくともラクだしストーリーを追いやすい。

あと、映画って俳優のちょっとした目の動きとか、画面の何でもなさそうな部分に目が行くような仕掛けがしてあったりして、それが重要だったりする。字幕で視線をはずしてると見逃しそう。字幕がつらいのは、歳をとってきて視線の移動が遅くなったってのもあるんだろうなw

字幕を出したまま吹き替えで見てると、違うこと言ってる場合が多い。どちらが合ってるかわかんないけど、ある部分が間違っていても吹き替えのほうが圧倒的に情報が多いから、総合的にはカバーできてしまう。字幕に目が行ってない分、画面で何が起きているかの情報も多いわけで。

DVDならときどき音声切り替えて俳優本人の声を確認したりする。向こうの女優さんって声太いねw  iTunes映画だと音声も字幕も切り替えられないのが不便。字幕をオフにしてて困ることは、場所とか状況を表す英語スーパーが日本語字幕に出ないことことがあるくらい(DVDによるだろうけど)。

字幕派と吹き替え派は「映画全体の雰囲気を能動的に味わいたい派」と「受動的でいいからストーリーと画面で目一杯楽しませてくれ派」の違いなんだろうな。字幕は補助として、英語が耳でだいたい聞き取れるようになったら、映画の見方が変わるだろうとあこがれてはいるけど。

「じゃあ、日本の映画を観ればいいじゃん!」と自分にツッコんでおきましたので大丈夫です。

【吉井 宏/イラストレーター】
http://www.yoshii.com
http://yoshii-blog.blogspot.com/

ようやく「アナと雪の女王」観れた。日本語吹き替え版。 ホント言うと、歌の出来が良すぎて歌優先でストーリーを変えてしまったのを知ってたため、つまらないんじゃないかと心配してました。それで何本か伝統のディズニープリンセスアニメを観て心構えしてたんだけど、よくできてるじゃん、面白かった! 「ラプンツェル」のほうが好みだけどw  で、「レリゴー」歌詞問題。ぜんぜんオーケー。日本語の歌詞がどうであれ、前後の話とエルサの表情だけでほとんどニュアンスは伝わってる。歌の一回目の「ありのー」で表情が明るく変化する瞬間がめちゃくちゃ良かった!


・rinkakインタビュー記事
『キャラクターは、ギリギリの要素で見せたい』吉井宏さん
https://www.rinkak.com/creatorsvoice/hiroshiyoshii
・ハイウェイ島の大冒険 http://kids.e-nexco.co.jp
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