2010/06/16

■グラフィック薄氷大魔王[224] 電子書籍の自炊と、「i文庫HD」

■グラフィック薄氷大魔王[224]
電子書籍の自炊と、「i文庫HD」

吉井 宏
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今、ものすごい勢いで本をScanSnapしてPDF化してます。買ったばかりの本も惜しげもなく裁断して電子書籍化。

とにかく、内容そのままで質量ゼロになるのが痛快でしかたがないのです。電子化することで機能アップもしてます。Adobe Acrobat ProはOCRテキスト認識もできるので、紙の本の最大の弱点だった検索が可能になるのです。

最近はむしろScanSnapする前提で本を買ってます。紙だけで売ってる現状が不自然に思えるほど。今まで古本屋に出した本は中身ごと出しちゃってたのがもったいなかったー! 置き場の心配がなくなったら本を買う量が増えた。読む量はあんまり増えてないけど。裁断、以前は少しは抵抗ありましたが、「買ってすぐ裁断」という禁断の一線を越えたとたん、平気になりました。

iPad用のPDFリーダーとして、「CloudReaders」と「GoodReaderHD」を用意したんだけど、次ページの読み込みのタイミングが遅いのと見開き表示できない点でイマイチ。ちゃんと読むにはパソコンしかないかな、と思ってましたが、いいのがありました。アプリとしては700円と高価なので後回しにしてたんです。

「i文庫HD」。これいいねえ! ページめくりはスムーズだし、見開きもできるし拡大縮小も自由自在。余白を画面外に出して本文部分のみ表示できるし、ダブルタップで部分的に拡大縮小できるのも使いやすい。いやもう信じられないくらい、本の閲覧が快適です。zipのまま放り込んでも大丈夫。よくわからんけど世界に誇るアプリって感じ?

取り込んだデザイン関連雑誌やムック本なんかを見開きで見ると「縮刷版」って感じで、なかなか良いです。それで自炊に拍車がかかっちゃったんです。閲覧したPDFの表紙が「本棚」にきれいに並ぶのもうれしい。iPadがもうひとまわり大きかったらなあ。画面サイズがA4くらいあれば、画集なども見応えがあって良さそう。

もちろん「i文庫HD」は自炊PDFを見るのが目的のアプリじゃなく、本来の電子書籍を読む機能も充実してます。230冊もついてくる内蔵書籍や青空文庫等を見るときは「T-time」のように書式や色も変えられて便利。至れり尽くせりです。

ただし、純粋にマニュアルとかのPDFを見るには向かないようです。PDF内の検索もできないし、表示もちょっと遅い。普通のPDFを見るには「GoodReaderHD」がベストかな。

スキャンしてPDFにした書籍のデフォルトの開き方を「見開き(表紙)」にしてページ構成してあると、i文庫HDでは表紙表示がないので1ページずれる。「表紙は1ページだけ表示」にできればいいんだけど。また、PDFにしおりをつけてパソコンに戻しても、しおりは反映されないです。

iPad向け自炊の注意点。ScanSnapの設定で、「白黒(白黒2値)」と「カラー(JPG)」のどちらか選ぶんだけど、文庫本などの字だけの本って「白黒」のほうがいいって思うじゃないですかー。実際データ容量も軽いし。でもiPadで開くと「白黒」ってめちゃくちゃ重いのです。フリーズしたかな?ってくらい重いです。同じ本をカラー(JPG)で取り込んでiPadで見てみたところ、ぜんぜん軽い!うぬー!すでに捨てちゃった本はしょうがないけど、ここ数日間で白黒で取り込んだ本は全部スキャンしなおしだー!

と思ったら、白黒PDFをJPGで書き出して、「ファイルを単一のPDFに結合」でAcrobatに読み戻せばいいのでした。白黒でScanSnapした本を適切にカラーに変換処理すると、カラーでスキャンしたものよりきれいかもです。写真は真っ黒だしページの汚れが多少残るものの、黄ばみが飛んでしまうので全体的にすっきりきれい。

自炊。なんか既視感があると思ったら、十数年前、CDをMP3化し始めたときの気分です。でも、CDはマスターとして取っておけるけど、本は捨てちゃうから再スキャンできない。なので、画集や作品集や絵本などの「とっておきの本」は、ScanSnapの画質がさらに良くなってからにするつもりです。

○参考

7年ぶりに発掘された初代ScanSnap
http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20080618140100.html >

ありったけScanSnap
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20090603140300.html >

○おまけ

裁断機は今のところ必要を感じません。カッターで切るのが非常にうまくなりました。大小のカッターを使い分け、刃をケチらずポキポキ折って使うのがミソです。背表紙を切り落とす前に無理なく切れる厚さに分割するのですが、それは裁断機でも同じわけで。そもそも、1年前の引越のときに、処分できそうな本は全部処分したので、残ってる本でScanSnapできる本はそう多くないのです。CDからMP3のときと同様、まもなく紙の本より電子書籍を買うほうが増えるでしょうし。

で、裁断してScanSnapし終わった単行本の紙に、太いサインペンやダーマトグラフでドローイングっていうかラクガキすると楽しいよ! 文字組がグリッドの役割をするし、もともと捨てる紙だからまったく気負いなく自由に描ける。ラクガキ用紙はもう一生買わなくていいかも。

ところで、「i文庫HD」のアイコンと「Air Display」のアイコンが、パッと見そっくり。よく使うアプリは1ページ目に置くので、まちがえそう。

【吉井 宏/イラストレーター】

「はやぶさ」帰還。しばらく前に、例の「こんなこともあろうかと!」の動画を見てたので、よけいに感激。地上との交信を終える25分前に撮影した地球の画像が泣かせる。「最後にはやぶさに地球を見せてやりたいと、わざわざ姿勢を反転」って。イトカワ、はやぶさ、のネーミングの由来を含めて、日本人の琴線に触れまくりの究極ニュースでした。このマンガも泣かせる↓
< http://drawr.net/show.php?id=1478887 >

●「毎月1日は映画サービスデー」CMに「ヤンス!ガンス!」登場
映画館に行くと、本編上映前に必ず流れる「マナー広告、兼、映画サービスデーの広告」CMってありますでしょ。あのCMにヤンス!ガンス!が登場です。現在、都内の映画館のほぼ全館で見れるはずです。エリアは拡大予定。TVK(テレビ神奈川)で日曜18:25 〜 18:30放映中。music.jp、Wiiシアターの間でも配信中。アヌシー国際アニメーション映画祭2010 TVシリーズ部門にノミネートされてましたが、受賞は逃したようです。

HP < http://www.yoshii.com>
Blog < http://yoshii-blog.blogspot.com/>;

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